May 13, 2005
| 日本の国富構成と米国比較 | |
| 資産分類 | 資産評価額 |
| A.非金融資産 | |
| a1.有形固定資産 | |
| 1.植物成長分 | 261 |
| 2.動物成長分 | 466 |
| 3.繊維製品 | 1125 |
| 4.木材・木製品 | 88 |
| 5.木製家具 | 3752 |
| 6.金属製家具 | 3583 |
| 7.核燃料 | 998 |
| 8.金属製品 | 5820 |
| 9.ボイラ・タービン | 5019 |
| 10.原動機 | 3636 |
| 11.運搬機械 | 9045 |
| 12.冷凍機・温室調整装置 | 5209 |
| 13.ポンプ及び圧縮機 | 7861 |
| 14.ミシン・毛糸手編機械 | 814 |
| 15.その他の一般産業用機械 | 9541 |
| 16.鉱山・土木建設機械 | 10446 |
| 17.化学機械 | 5920 |
| 18.産業用ロボット | 1998 |
| 19.金属工作機械 | 8813 |
| 20.金属加工機械 | 6060 |
| 21.農業機器 | 7396 |
| 22.繊維機械 | 1212 |
| 23.食料品加工機械 | 2722 |
| 24.製材・木工・合板機械 | 600 |
| 25.パルプ装置・製紙機械 | 777 |
| 26.印刷・製本・紙加工機械 | 3402 |
| 27.鋳造装置 | 620 |
| 28.プラスチック加工機械 | 2222 |
| 29.その他の特殊産業機械 | 7107 |
| 30.一般機械器具・備品 | 9089 |
| 31.事務用機械 | 3977 |
| 32.サービス用機器 | 6168 |
| 33.電気音響機器 | 557 |
| 34.ラジオ・テレビ受信機 | 482 |
| 35.ビデオ機器 | 388 |
| 36.その他の民生用電気機器 | 1774 |
| 37.電子計算機・同付属装置 | 17720 |
| 38.有線電気通信機器 | 8796 |
| 39.無線電気通信機器 | 4365 |
| 40.その他の電気通信機器 | 2381 |
| 41.電子応用装置 | 8412 |
| 42.電気計測器 | 5389 |
| 43.発電機器 | 774 |
| 44.電動機 | 4087 |
| 45.開閉制御装置・配電盤 | 27209 |
| 46.その他の産業用重電機器 | 4596 |
| 47.電気照明器具 | 3121 |
| 48.乗用車 | 23013 |
| 49.トラック・バス・その他の自動車 | 9307 |
| 50.二輪自動車 | 468 |
| 51.自動車部品 | 3646 |
| 52.鋼船 | 3170 |
| 53.その他船舶 | 752 |
| 54.鉄道車両 | 4055 |
| 55.航空機 | 3085 |
| 56.自転車 | 14 |
| 57.産業用運搬車両 | 1809 |
| 58.その他輸送機械 | 525 |
| 59.カメラ | 170 |
| 60.その他光学機械 | 482 |
| 61.時計 | 9 |
| 62.理化学機械器具 | 324 |
| 63.分析器・試験器・計量器・測定器 | 4537 |
| 64.医療用機械器具 | 4612 |
| 65.その他の製造工業製品 | 4266 |
| 66.住宅建築(木造) | 199338 |
| 67.住宅建築(非木造) | 210058 |
| 68.非住宅建築(木造) | 22581 |
| 69.非住宅建築(非木造) | 336451 |
| 70.道路 | 115796 |
| 71.街路 | 14627 |
| 72.橋梁 | 17085 |
| 73.有料道路 | 39955 |
| 74.河川 | 44729 |
| 75.砂防 | 12027 |
| 76.海岸 | 5404 |
| 77.公園 | 9399 |
| 78.下水道 | 43777 |
| 79.下水道終末処理 | 14036 |
| 80.廃棄物処理施設 | 6632 |
| 81.港湾 | 17265 |
| 82.漁港 | 7699 |
| 83.空港 | 2420 |
| 84.農業土木 | 49436 |
| 85.林道 | 4891 |
| 86.治山 | 8257 |
| 87.鉄道軌道建設 | 37721 |
| 88.電力施設建設 | 41786 |
| 89.電気通信施設建設 | 18671 |
| 90.その他の土木建設 | 183590 |
| 91.プラントエンジニアリング | 73396 |
| a1.有形固定資産合計 | 1827069 |
| a2.無形固定資産 | |
| 92.鉱物探査 | 18 |
| 93.受注ソフトウェア | 17645 |
| 94.パッケージソフトウェア | 1763 |
| 95.自社開発ソフトウェア | 8387 |
| a2.無形固定資産合計 | 27813 |
| a3.在庫 | |
| 96.製品在庫 | 48650 |
| 97.半製品在庫 | 15397 |
| 98.原材料在庫 | 8526 |
| a3.在庫資産合計 | 72573 |
| a1+a2+a3.生産資産合計 | 1927454 |
| a4.土地 | |
| 99.農用地 | 284511 |
| 100.工業用地 | 126806 |
| 101.商業用地 | 445934 |
| 102.住宅地 | 679660 |
| a4.土地資産合計 | 1536910 |
| A.非金融資産合計(a1+a2+a3+a4) | 3464364 |
| B.耐久消費財 | |
| 1.衣服・身見品 | 9790 |
| 2.家具・備品 | 3387 |
| 3.書籍 | 7152 |
| 4.ゴム製品 | 730 |
| 5.皮革製品 | 1446 |
| 6.陶磁器・ガラス製品 | 2254 |
| 7.金属製品 | 4410 |
| 8.一般機械 | 651 |
| 9.電子計算機・同付属装置 | 3894 |
| 10.通信機器 | 2867 |
| 11.その他の家電 | 37238 |
| 12.自動車 | 58253 |
| 13.その他の輸送機械 | 3066 |
| 14.精密機械 | 7783 |
| 15.その他の製品 | 9261 |
| 16.パッケージソフトウェア | 457 |
| B.耐久消費財合計 | 152639 |
| C.対外純資産 | |
| 対外資産 | 348436 |
| 対外負債 | 215389 |
| C.対外純資産 | 133047 |
| D.国富 | |
| D.国富(A+B+C) | 3750050 |
| 単位:10億円(名目)。対外純資産は『国民経済計算年報』(平成 | |
| 17年3月10日)、他は著者推計値。 | |
「日本の国富調査の歴史」では、直接観察による国富調査の歴史を紹介しました。ここでは恒久棚卸法によるわれわれの資本ストック推計値に基づいて、2000年の日本の国富における資産構成と米国との比較を紹介します。
ここでの国富とは、非金融資産、家計の耐久消費財、そして対外純金融資産からなります。非金融資産では、93SNAの資産概念では有形固定資産、無形固定資産および在庫の生産資産(produced asset)、そして土地という非生産資産(non-produced asset)を含んでいます。無形固定資産には、日本の国民経済計算で導入されている受注ソフトウェア(資産分類93)に加えて、93SNA勧告にはありながらも現在の日本では未だ導入されていないパッケージソフトウェア(94)および自社開発ソフトウェア(95)を含みます。なお、計数はすべて2000年暦年期末における2000年価格評価です。1)
非金融資産としての国富の総額は3464兆円であり、日本の国内総生産の6倍ほどの規模です。日本のSNA(『国民経済計算年報』)(平成17年3月10日)のストック勘定における非金融資産の資産額は2816兆円です。そこでは含まれていない上記ふたつのソフトウェアを除いても、600兆円以上の乖離があります。その差額はほとんど生産資産のうちの有形固定資産の評価額の差によっています。われわれの資本ストック推計における投資額(総固定資本形成)は、総額において日本のSNAと整合しています。また日本のSNAは、1970年国富調査を基準とするベンチマークイヤー法によっています。償却分布は社会資本については定額法、その他の資産は定率法です。われわれの推計では、1955年国富調査をベンチマークとしていますが、ほぼ恒久棚卸法に近いと言って構いません。償却分布は幾何分布を想定していますので定率法です。価格指数の相違を除きますと、その乖離を説明する大きな要素は償却率の大きさということになります。
日本のSNAでは、償却率をどの資産分類レベルで定義しているのか、また償却率自体の大きさなどクリアではありませんので直接比較することは難しいのですが、おそらくそこで仮定する償却率が過大なのではないかと考えています。逆算すると住宅などでも8%ほどの償却率を仮定しているのかもしれません。そのようなことから非金融資産の評価額は過小推計なのではないかと考えられます。現在、ESRIでは国民経済計算調査会議のもとで資本ストック検討委員会というものを組織して議論を始めましたので(自分も委員として参加させて頂いておりますが)、資産評価額についてはこれからいろいろと検討されるものと思います。2)
さて、耐久消費財の推計値では153兆円となっています。日本のSNA(ストック編)では参考表として「家計の主要耐久消費財残高」という表がありますが、そこでは2000年で128兆円ですので、28%ほど上回っていることになります。これを非金融資産に加えると3617兆円となり、これが対外純資産を除く実物の資産総額になります。同様な概念による米国での測定値(Jorgenson and Landefeld [2005]3))では資産総額は41.1兆ドルとなっていますので、2000年の年平均為替レート(107.8円/ドル)で日本円で評価すると4430兆円です。米国は800兆円ほど日本の実物資産を上回るだけということですので、日本のGDPが米国のおよそ半分ほどである点からみると、日本の実物資産の評価額が過大なのではないかと疑問をもたれるかもしれません。
それは、比較を名目でおこなっていることによります。日米では資産の相対比価が違います。資産の相対比価(relative price)とは、米国と同じ品質の資産を日本で買ったときの金額(円/ドル:ドルで基準化)−資産の購買力平価:PPP(Purchasing Power Parity)−を為替レートで割ったものです。例えば、米国で1000ドルで購入できる資産が、日本では20万円しているとすれば、当該資産のPPPは200円/ドルということになり、為替レートが100円であるとすれば相対比価は2倍であるといえます。もし為替レートが購買力平価仮説にしたがう(為替レート=PPP)であるならば、相対比価は1です。 相対比価を考慮すると実質の比較が可能になります。2000年において土地資産の相対比価(日本/米国)は5.3倍、固定資産についてはも1.5倍ほどですので、それぞれで米国基準価格で評価すれば、日本の実物資産の規模は米国の38.6%の水準となります。4) 一方、日米のGDPも米国基準価格に直すとすれば、米国の36%ほどになります。フロー量としてのGDPの相対的な規模と、ストック量としての実物資産の規模はほぼ近似してくることになります。これは一国集計量での比較ですので、産業構造の相違に依存しますが、一国集計レベルでの資本係数(あるいは資本ストックの生産性)の日米比較でもありますので、生産技術構造としては適切な水準であろうと思います。
さて、再び名目の世界に戻り、今度は金融資産としての対外純資産に着目すると、日本はプラス133兆円、米国はマイナス1.6兆ドル(2000年の年平均為替レート換算で171兆円)です。名目の世界では日米両国の国富(正味資産)は、日本で3750兆円、米国では39.5兆ドル(4259兆円)ということで日本は米国の88%もの国富を有するということになります。
野村浩二(慶應義塾大学産業研究所)