レキシントン−国家遺産博物館の楽しみ

November 19, 2004

レキシントンには国家遺産博物館があります。英語名では館の入口に"National Heritage Museum"と書いてあり、ホームページ上でもそうあります。Nationalというあたり、さぞかし立派なものかと思われるかもしれません。ですがこのNationalは「国立」という意味ではなく「国家的な」遺産という意味で使っているものと思います。そういうことで正確には"Museum of Our National Heritage"という名称も使っているようです。その展示品は、レキシントンだけに独立戦争時のアメリカの遺産としての、ちょっとした工芸、道具類、おもちゃ、写真などです。また(時代はズレますが)いろいろなネオン(宣伝、看板など)の展示が常設されています。入場は無料ですし、建物(トイレも)はきれい、駐車場も無料、交通アクセス良しということで、一度訪れても良いでしょう。

バスでのアクセスはAlewifeというレッドラインの終点から、#62か#76のバスに乗ります(昼時でざっくり言って20-30分に一本)。Mass.Aveをどんどん西(やや北西)に進み、Arlingtonを超えてLexingtonに入って(おそらく)5分程度で左手に分かれ道が出てきます。それはRoute 2A(Marrett Road)で、(バスは道なりに右に行きますが)左に行くとコンコードにつながります。その三角地帯にあるのが国家遺産博物館です。なお、レキシントンセンターまで予め行ってしまって、歩いて行こうとすると、Mass. Ave沿いに歩くだけですが意外に距離があり、たぶん徒歩で40-50分はかかると思いますの注意してください。センターからは30分に一本、LEXPRESSというレキシントンの市内のみを走るちょっと不思議なバスがありますので、LEX1かLEX3に乗れば行けます。

さて、博物館そのものは一度見ると、もういいかなと思うでしょうが、博物館の中にはたいへん立派なホールがありますのでレキシントン住人にはおもしろいイベントもあります。年間に4回ほど夜にゲストスピーカーを呼んで講演会をおこなっているようです。2003年の秋には、1970年にノーベル経済学賞を受賞した(経済学の教科書でおなじみの)ポール・サムエルソン(Paul A. Samuelson)教授の講演会がありました。レキシントンの住人だけにチケット(無料)が郵送されてきましたので、聴衆は集まらないかなと思いながらも早めに会場に行きましたが、成人の4割以上は修士号か博士号を持っているというレキシントンならではかもしれません。瞬く間に人が集まり、結局300人ほど入るであろう会場は満員となりました。静かなやや薄暗い会場から見上げると、壇上の机に小さなランプが優しく照らし、サムエルソン教授の話をひっそりと聞くような雰囲気です。アメリカの経済情勢や財政問題を論じていましたが、やや短く40分程度で終了した講演後には、フロアからの質問(多くの人は他分野の教授などのようです)があり、皆が並んで盛んに環境問題、税制などを中心に長い時間(50分ほど)幅広い問題についての質疑応答をしていました。それは日本でみるような(スピーカーと聴衆に距離感のある)講演会ではなく、なにか暖炉を囲んで内緒話をしているような親近感のある集会でした。

もうひとつの親近感のあるイベントは、子供の小学校の先生がおこなうミュージカルです。これは大人8ドル、子供5ドルを支払いますが、夜7時から始まるそれには会場は親とキッズで満員です。2004年には"How to Eat Like a Child"という先生がキッズに扮しておこなうコミカルなミュージカルでした。さすがアメリカだなあと思うことは、みな演技がうまい(まったく恥ずかしさは感じていない・・・!)、そして女性の先生が8割以上いることです。自分の子供の担任の先生は妊婦さんで、その日は気持ちが悪くなって早退したと(そしてちょっと泣いていたと)子供から聞きました。しかしその夜、ばっちり化粧してミュージカルで楽しく踊り、歌い、はしゃいでいる姿がステージにはあります(日本なら、元気になっていても辞退せざるをえない状況に追い込まれてしまうかもしれません・・)。ミュージカルが終了すると、あっさりと帰宅する人で混み合いましたが、キッズはみな大喜びで興奮冷め止まず・・。アメリカの学校は公立でも、ことあるごとに寄付金を集いますが、このミュージカルなども先生と生徒の距離感をより縮めて互いに楽しみながら、そして寄付金も集めます。日本の小学校にもっと女性の先生を、そして寄付金を集めて図書を充実させたりするための数々の楽しいイベント開催など、公立学校にももっと自由度が欲しいものです。そしてそれを安易に批判するのではなく、子供たちを託す学校に対して地域社会としていろいろな試みを見守ってあげる寛容さを学ぶべきなのでしょう。


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