『資本の測定−日本経済の資本深化と生産性−』
第1章 資本の測定

第1章は、生産要素としての資本(capital as a factor of production)、その測定のための概念と理論的フレームワークを考察する。一般に資本の測定は、2つの意義を持っている。1つは、生産過程において投入される能力的な資本量(capital capacity)の測定であり、効率単位(efficiency unit)によって測定される資本ストック量や資本サービス量を指す。もう1つは資本の有する価値(capital value)の測定である。

資本は、その能力が将来にわたっても提供されるという耐久的な性質によって、ある期間に使い尽くされることなく価値を貯える。資本という実体の持つ、能力量と価値というこの2つの側面は、資本の概念を伝統的に不明瞭なものとしていた。それは資本の量と価格の対応を明確にした、資本の双対アプローチ(dual approach)によって総括的に描写される。

資本の測定のためには、純粋に理論的な約束ではなく観察に制約された、測定のための諸概念の構築が必要である。あるひとつの資本財の賦存量を観察した場合においても、そこには製造年代(vintage)と設備年齢(age)の異なる資本財が存在する。製造年代の相違は、資本が生産された異なる年代における、異なる技術−``資本に体化された技術進歩"(capital embodied technology)−の反映を意味している。一方、設備年齢の相違は、年齢の経過−``経齢"(aging)−にともなう劣化や磨耗の反映である。

この2つの意味において、賦存する資本の品質は異なっていると認識される。前者はあらゆる財に共通した品質の相違であり、後者は資本に特有の相違である。設備年齢の相違は伝統的な償却概念から、時間と設備年齢の分離によって時系列的償却(time series depreciation)と純粋に経齢的な横断面的償却(cross section depreciation)の2つの概念に識別される。

第1章の最後には、異質(heterogeneous)な資本の集計(aggregation)の問題を扱う。いずれも、続く第2章および第3章での測定のための基本的なフレームワークを提供している。


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Measurement of Capital
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