『資本の測定−日本経済の資本深化と生産性−』
第3章 資本サービス価格

第3章は、資本サービス価格の測定である。 裁定条件によって資本の取得価格は、その資本が将来に提供するサービス価格の割引現在価値であると解される。観察される資本取得価格と、仮説を伴いながらも測定される資本所得、生産的資本ストックから資本サービス価格が帰属計算される。 自己所有(owner occupied)された資本、その使用者価格(user cost of capital)の帰属計算のために、企業の内部収益率を他人資本の調達における税引後利子率と自己資本調達において要求される株主収益率の加重平均収益率であるとし、実際に企業行動を制約している法人税、事業税、取得税、固定資産税などの企業税制、引当金・準備金、特別償却などの優遇税制措置、資本所得における配当課税やキャピタルゲイン課税など、わが国の税体系を描写した資本サービス価格のフレームワークを構築している。 その体系のもと、産業別資産別資本サービス価格と産業別株主収益率が内生的に測定される。

資本サービス価格におけるもっともシンプルな推計値は、産業間および資産間でその異質性を無視したインプリシットデフレーターによって定義される。測定バイアスを持ったそれをひとつの比較対象としながら、本書での資本サービス価格のフレームワークによって統御された測定値との比較をおこなっている。資本サービス価格、株主収益率や加重平均収益率、実効税率(effective tax rate)、税の楔(tax wedge)などの測定結果は、類似した方法論によって測定されている米国でのJorgensonデータベースとの対比のもとに考察される。

本書では、資本と各種生産性指標などの多くの測定値における日米両国の相対比較とともに、絶対水準の比較をおこなっている。第3章の後半は、資本取得あるいは資本ストックの日米相対比価(relative price)や購買力平価(purchasing power parity:PPP)とともに、資本サービス投入における日米相対比価を測定する。それは両国における資本取得価格、実質収益率、償却率や実効税率の相違を反映した総括的な資本サービス価格の日米価格差である。


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Measurement of Capital
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