『資本の測定−日本経済の資本深化と生産性−』
第4章 資本サービスと経済成長

第4章は、資本サービス投入量と資本品質(capital quality)の測定、そして全要素生産性(total factor productivity:TFP)、平均労働生産性(average labor productivity:ALP)および平均資本生産性(average capital productivity:ACP)などの各種生産性指標の産業別測定とその集計フレームワークを通じてわが国の経済成長の要因を説明することに充てられている。

前章での資本サービス価格の測定プロセスは、同時に資本ストックから資本サービスへの年次化(annualize)をおこなうプロセスである。測定された産業別資産別資本サービス投入量から、異質な資産の集計フレームワークの設定によって、集計資本サービス投入量と3つの代替的な集計資本品質を定義している。資本品質は、資産構成効果(intra-quality effect)、産業配分効果(allocation effect)およびその他の交差効果へと分解される。

先進諸国におけるほぼいずれの研究例でも、一国集計レベルにおける経済成長の源泉として、戦後の経済成長を説明するもっとも大きな要素は資本サービス投入量の拡大である。本書での1960--2000年の測定対象期間においても、経済成長の過半は資本投入量の拡大によって説明される。生産要素における資本/労働投入比率の拡大は、資本深化(capital deepening)と呼ばれる。わが国経済成長の経験からみれば、高度経済成長期にはTFPの上昇が顕著であり、そしてその終焉に伴ってより急速な資本深化がおこなわれている。それは要素相対価格として、資本サービス価格に対する労働サービス価格の上昇にともなう変化である。この期間における集計ALPの成長は、そのおよそ半分は資本深化の寄与によるものである。

日米経済成長における要因分解の相対比較とともに、第4章の後半では日米共通産業分類の設定のもと、KLEM投入要素、付加価値Vおよび粗生産量Xにおける相対比価の測定を通じて、日米TFPギャップ、ALPギャップ、ACPギャップおよび資本深化水準格差を測定する。 わが国の一人あたり名目GDPは、単純なドル建て評価によっては1980年代後半には米国の水準に匹敵するものの、一国集計レベルによるTFP水準やALP水準では依然として米国の水準にキャッチアップしていない。ここでの集計TFPギャップは産業別日米平均Domarウェイトによって産業別TFPギャップと整合しており、一国の生産性格差の源泉として産業別要因分解をおこなう。


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Measurement of Capital
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